保育士の年収は給料が安いこともあり、低く感じる方もいます。
保育士の給料は安くて当たり前といった意見を耳にすることがありますが、なぜ安くてどのくらいもらっているものなのか気になりますよね。
中には、保育士の給料に期待ができないため、他業種への就職・転職を考える方もいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、保育士の給料が安いのは当たり前という噂を徹底検証し、保育士が給料を増やす方法についても解説します。
- 保育士の平均年収は3,969,000円で年々上昇している
- 保育士の給料が安い理由は保育所の運営が利益の追求を目的としていないことが関係している
- 保育士が給料を増やすには処遇改善手当がもらえる施設やキャリアアップをすることが有効
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保育のキャリア編集部
保育のキャリア編集部はこれまで保育士の転職サイトや職場での人間関係、残業、年収に関する調査を1,303名の保育士や保育士経験者にアンケートを実施してきました。調査で得られた保育士の声や自身がエージェントサービスを利用してきた経験を当サイトのコンテンツに反映させています。
当コンテンツは構成・執筆・撮影・編集・図版作成を保育のキャリア編集部が担当して作成されています。
保育のキャリア編集部は当コンテンツを作成するにあたり、アンケート調査で得た口コミやWebサイトに掲載されている情報、保育士向けメディアを運営することで得られた知見を参考にしています。
アンケートはクラウドソーシングのサービスを通して調査を実施し、現役保育士・保育現場で働いたことがある方168名から口コミを取得しました。
現役保育士・保育現場で働いたことがある方を対象にしたアンケートでは、以下の質問に回答してもらいました。
- 性別を教えてください
- 年齢を教えてください
- 保育士としての年収はどのくらいですか?
- 役職を教えてください
- 給料アップにつながった項目はなんですか?
上記のアンケートに回答してくれた168名の性別と年齢構成は以下のとおりです。
- 女性:132名(78.6%)
- 男性:36名(21.4%)
以下では回答者の年齢構成を表示しています。
- 20歳未満:3名(1.8%)
- 20歳以上30歳未満:39名(23.2%)
- 30歳以上40歳未満:89名(53.0%)
- 40歳以上50歳未満:28名(16.7%)
- 50歳以上60歳未満:9名(5.4%)
- 60歳以上:0名
また、コンテンツを作成する際には以下のWebサイトに掲載されている情報を参考にしています。
保育士の給料が安いことが当たり前と言われる原因
保育士の給料が安いのは当たり前と思われやすい原因として、以下の3つが挙げられます。
- 保育所の運営は利益を目的としていない
- 保育士の仕事が重要なことが理解されていない
- 保育士の仕事内容が理解されていない
これから保育士としての就職・転職を検討している方は、保育所を取り巻く環境や世間からのイメージについてよく把握しておきましょう。
保育所の運営は利益を目的としていない
保育士の給料がなかなか上がらない原因として、そもそも保育所の運営は利益を目的としていないことが挙げられます。
厚生労働省の「保育所保育方針」によると、保育所の役割や目的は「子どもの健全な心身の発達を図ること」と定義されています。
保育所は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条の規定に基づき、保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。
引用:厚生労働省「保育所保育指針」
また、保育所は主に保育料や補助金によって運営されており、支給される金額は預かる子どもの年齢や人数などによって定められる公定価格に基づいていて算出されています。
保育所に支給された金額は経営者の判断によって給料として支払われるため、状況や園長の方針によっては給料が安くなってしまいます。
国からの補助金については増やすことで国民の負担率が上がり、子どもを預けることができない家庭が出てくる可能性があるため、大幅に増やすことが難しいです。
このように、保育所は基本的に利益を出すことを目的に運営されておらず、保育士の給料となっている公定価格についても定められているため、給料が安くなってしまうことがあります。
保育士の仕事が重要なことが理解されていない
保育士は世間から仕事の重要性が認知されていないことも、給料が安いのは当たり前という考え方につながっています。
保育士は「子どもと遊んでるだけ」「楽してる」と誤解している方も一定数おり、こうしたイメージが給料が安くて当たり前という考えにつながりがちです。
実際には、保育士が子どもの成長や安全を守ることで、保護者が安心して働きに出られるという社会的に重大な役割を担っています。
近年では、待機児童数が1万8,462人と過去最多を記録しており、保育士のニーズが高くなっていることからも、保育所は共働き家庭にとって欠かせない存在となっています。
共働き家庭などの小学生を預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)を利用できない全国の待機児童が、今年5月時点で過去最多の1万8462人(速報値)に上ることが、こども家庭庁のまとめでわかった。利用希望者が想定を上回るペースで増えているのが要因だ。
引用:読売新聞「学童保育の待機児童、過去最多の1万8462人 利用希望者の増加が想定上回るペース」
同庁によると、待機児童は前年から2186人増加し、過去最多だった2019年の1万8261人を上回った。20年と21年は、コロナ禍での預け控えなどから減少したが、行動制限が緩和された22年から増え続けている。
保育士のニーズの上昇に伴い重要性が理解されてきているため、国からは保育士の給料改善を図り、処遇改善手当のような補助金が支給されている施設もあります。
保育士の仕事内容が理解されていない
保育士の仕事がハードな割に給料が上がりにくい理由は、保育士の仕事内容が一般社会であまり理解されていないことも原因と考えられます。
保育士の仕事は子どもと遊んで楽そうに見えるかもしれませんが、生活のすべての場面において、子どもの安全を見守るという重大な責任があります。
実際、プール遊びや食事中に子どもが事故や死亡により、保育士が業務上過失致死罪に問われるケースも少なくありません。
2017年にさいたま市緑区大間木の認可保育所「めだか保育園」でプール遊びをしていた女児=当時(4)=が溺れて死亡した事故で、事故を防止する注意義務を怠ったとして、業務上過失致死の罪に問われた無職で元園長の被告(70)=さいたま市=と保育士として勤めていた派遣社員の被告(32)=東京都足立区=の論告求刑公判が9日、さいたま地裁(北村和裁判官)で開かれた。
引用:埼玉新聞「さいたまプール女児死亡、元園長と保育士の派遣社員に禁錮1年求刑」
発表によると、事故が起きたのは22年11月29日昼。給食でリンゴ(各辺約2センチ、厚さ約3ミリ)を食べていた女児が眠そうな様子だったため、保育士が口に指を入れてリンゴをかき出した。その後、女児はぐったりして意識を失い、搬送先の病院で死亡した。死因は低酸素脳症。口に指を入れられたことに驚き、リンゴが気道に詰まって窒息した可能性があるという。
引用:読売新聞「1歳女児、給食のリンゴを喉に詰まらせ死亡 保育士が口に指を入れかき出したことが逆効果か」
また、こども家庭庁の「令和4年教育・保育施設等における事故報告集計」でも、各保育施設では数多くの負傷や事故が報告されています。
負傷 | 死亡 | 合計 | |
---|---|---|---|
幼保連携型認定こども園 | 482人 | 1人 | 483人 |
幼稚園型認定こども園 | 25人 | 0人 | 25人 |
保育所型認定こども園 | 74人 | 0人 | 74人 |
幼稚園 | 36人 | 0人 | 36人 |
認可保育所 | 1,189人 | 1人 | 1,190人 |
小規模保育事業 | 23人 | 0人 | 23人 |
事業所内保育事業 | 8人 | 0人 | 8人 |
企業主導型保育施設 | 23人 | 1人 | 24人 |
引用:こども家庭庁「令和4年教育・保育施設等における事故報告集計」
保育士は危険から子どもを守る重要な仕事であるにも関わらず、仕事の重要性があまり世間に浸透していないことが現状です。
保育士は平均でどのくらいの給料をもらっている?
厚生労働省が発表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模が10人以上の施設で働く保育士の平均給与は以下のとおりとなっています。
きまって支給する現金給与額 | 年間賞与・その他特別給与額 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
男性 | 306,600円 | 806,000円 | 4,485,200円 |
女性 | 268,900円 | 705,500円 | 3,932,300円 |
男女計 | 271,400円 | 712,200円 | 3,969,000円 |
引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より算出
男性保育士と女性保育士では年収に552,900円の差があり、男性保育士のほうが給料が高くなっていることがわかります。
また、当メディアでも168名の男女の保育士を対象に年収についてアンケートを実施したところ、保育士の年収で一番多かった回答は「200〜249万円(26.2%)」で、次に「300〜349万円(20.8%)」となりました。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」と当メディアが実施したアンケートでは、約50〜200万円前後の差があります。
このことから、保育士の年収は各保育施設、地域、役職、年齢などさまざまな条件によって大きく異なることがわかります。
ここからは保育士の年収について、さらに深堀していきましょう。
保育士の平均給与の推移
厚生労働省の統計調査によると、保育士の平均給与は以下のように推移しています。
きまって支給する現金給与額 | 年間賞与・その他特別給与額 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
令和5年 | 271,400円 | 712,200円 | 3,969,000円 |
令和4年 | 266,800円 | 712,100円 | 3,913,700円 |
令和3年 | 256,500円 | 744,000円 | 3,822,000円 |
令和2年 | 249,800円 | 747,400円 | 3,745,000円 |
令和元年 | 244,500円 | 700,600円 | 3,634,600円 |
引用:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より算出
令和元年以降、保育士の平均給与は年々上昇しており、令和5年の平均年収は400万円程度ということがわかりました。
これは2013年(平成25年)から開始した処遇改善手当が関係していると考えられます。
実際に、保育士の給料は2013年以降から上昇傾向にあり、処遇改善手当を受け取る施設が増えることで給料も改善されています。
年齢別の給与を比較
続いて、保育士の給与を年齢別に確認していきましょう。
保育士の給与は、年齢と共に以下のように変化していきます。
きまって支給する現金給与額 | 年間賞与・その他特別給与額 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
20~24歳 | 230,900円 | 438,000円 | 3,208,800円 |
25~29歳 | 260,800円 | 695,700円 | 3,825,300円 |
30~34歳 | 264,300円 | 684,700円 | 3,856,300円 |
35~39歳 | 277,800円 | 760,600円 | 4,094,200円 |
40~44歳 | 286,200円 | 815,900円 | 4,250,300円 |
45~49歳 | 284,700円 | 845,800円 | 4,262,200円 |
50~54歳 | 287,000円 | 778,800円 | 4,222,800円 |
55~59歳 | 311,000円 | 897,300円 | 4,629,300円 |
60~64歳 | 305,900円 | 812,400円 | 4,483,200円 |
65~69歳 | 334,600円 | 813,600円 | 4,828,800円 |
70歳~ | 375,400円 | 1,329,900円 | 5,834,700円 |
引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より算出
保育士は月額給与が30万円を超えるのは50代以降になるため、他の職種と比較した場合、給与が低めであるといえます。
年収が高い都道府県
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、保育士の年収が高い都道府県は、主に東京、京都、和歌山、広島、大阪です。
きまって支給する現金給与額 | 年間賞与・その他特別給与額 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
東京 | 315,800円 | 745,100円 | 4,534,700円 |
京都 | 302,700円 | 896,000円 | 4,528,400円 |
和歌山 | 298,300円 | 919,300円 | 4,498,900円 |
広島 | 291,500円 | 1,029,900円 | 4,527,900円 |
大阪 | 291,500円 | 781,800円 | 4,279,800円 |
引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より算出
平均年収と月額給与は東京、年間賞与・その他特別給与額は広島がトップとなっています。
保育士の給与は、西高東低で西日本エリアのほうが高い傾向にあります。
役職別の給与を比較
保育士の役職別の給与は、以下のとおりです。
私立の給与月額(常勤) | 公立の給与月額(常勤) | |
---|---|---|
園長(施設長) | 565,895円 | 632,982円 |
主任保育士 | 422,966円 | 561,725円 |
保育士 | 301,823円 | 303,113円 |
保育補助者(資格のない者) | 223,584円 | 148,720円 |
引用:内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」
保育所のトップである園長(施設長)になると、役職についていない保育士より25万円以上も月額給与が高くなります。
また、私立と公立の保育所を比較すると、公立のほうが給与月額が高くなるのも特徴です。
雇用形態別の給与を比較
保育士の雇用形態別の給与は以下のとおりです。
きまって支給する現金給与額 | 年間賞与・その他特別給与額 | 平均年収 | |
---|---|---|---|
一般労働者 | 271,400円 | 712,200円 | 3,969,000円 |
短時間労働者 | 115,896円※1 | 91,000円 | 1,481,752円 |
臨時労働者 | 83,080円※2 | なし | 996,960円 |
※2.1日当たり所定内労働時間数5.8時間×1時間当たり所定内給与額1,077円×実労働日数13.3日で算出
引用:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より算出
臨時労働者は年間賞与・その他特別給与額がないため、一般労働者や短時間労働者より平均年収が大幅に落ちます。
また、短時間労働者も、一般労働者の給与と比較して半分以下となっており、1人で生活をする場合には苦しい平均年収となります。
このため、「保育士で安定した収入を得たい」という場合は、一般労働者として働くほうが経済的に安心できるでしょう。
保育士が給料が見合わないと思う主な理由
保育士が給料が見合わないと思う主な理由として、以下の4つが挙げられます。
- 保育士が不足している
- 労働時間が長い
- 事務作業が多い
- 仕事を持ち帰らないと終わらないときがある
保育士なら誰でも一度は抱きやすい不満を一つずつチェックしていきましょう。
保育士が不足している
保育士が給料に不満を感じやすい理由として、どこの施設も保育士の数が不足しており「余裕がないこと」が考えられます。
特に、子どもの数に対して保育士の数が足りていない場合は、子ども1人ひとりに目が届かず、事故につながる可能性もあります。
また、保育士が少ない施設では、一人が欠席や退職をすると周囲に負担がかかるため、気を遣ってしまって「気軽に休めない」という方もいるでしょう。
このように保育士不足から起きる負担の増加が、保育士の給料に対する不満につながっていると考えられます。
労働時間が長い
保育士が給料が見合わないと感じやすいのは、労働時間が長いという理由も挙げられます。
保育士の残業時間は厚生労働省の2019年賃金構造基本統計調査 によると、月4時間とされていますが、実際には違うケースも少なくありません。
特に、正式な残業ではない持ち帰りの仕事もあるため、こうした仕事量の多さや労働時間の長さに耐え切れず退職するケースもあります。
実際に、厚生労働省が発表している保育士が退職した理由では労働時間が長いことが全体の24.9%を占めています。
1位 | 職場の人間関係(33.5%) |
---|---|
2位 | 給料が安い(29.2%) |
3位 | 仕事量が多い(27.7%) |
4位 | 労働時間が長い(24.9%) |
5位 | 妊娠・出産(22.3%) |
このように、保育士は持ち帰り仕事を含めた労働時間が長いかつ給料が比較的に低いため、保育士を辞めたいと感じる方も少なくありません。
特に、ワークライフバランスを重視しており、仕事もプライベートも両立させたい方には、保育士の労働時間の長さはネックになるかもしれません。
事務作業が多い
保育士は子どものサポート業務のほかに、以下のような事務作業もこなす必要があります。
- 指導計画
- 保育日誌
- 保育経過記録
- 連絡帳
- 保護者向けのお便り
- イベント用のプログラム
- 自治体などへの提出書類
特に、指導計画は月・年単位の「長期指導案」と日・週単位の「短期指導案」があり、子どもの生活に配慮して作成しないといけないので大変な作業です。
こうした事務作業の多さによって労働時間が長くなるため、給料と見合わないと感じやすい原因の一つとなっています。
また、時間外労働が多いにも関わらず残業代が未払いだったり、サービス残業を当たり前と強要する施設はブラック企業の可能性があるので要注意です。
保育士の求人の中には、月額給与の中にみなし残業(固定残業代)が含まれて、超過勤務が発生しても残業手当がつかない場合もあります。
こうしたみなし残業(固定残業代)が含まれる求人は、一般的な給料よりも高めに設定される傾向があるので慎重に見極める必要があります。
仕事を持ち帰らないと終わらないときがある
保育士はイベントで使用する小道具や衣装は、手作りで製作することになるため、場合によっては自宅に仕事を持ち帰らないと終わらないときがあります。
こうした仕事の持ち帰りは、上司からの指示があった場合、残業をせざるを得ない状況のみ「正式な残業」と認定され残業代を請求することができます。
ただし、保育士が自主的な判断で持ち帰った仕事は、正式な残業として認められないため注意が必要です。
また、自宅に仕事を持ち帰ると、やはり「家に帰ってもくつろげない…」と感じてしまうため、人によって強い不満を抱く可能性もあります。
保育士が給料を増やす方法
保育士が給料を増やす方法は、主に5つあります。
- 処遇改善手当を受ける
- キャリアアップする
- 資格の手当を受ける
- 転職をする
- 副業をする
当メディアが実施したアンケートでは、給料アップにつながった方法として「処遇改善手当」「キャリアアップ」「資格の手当」を挙げる方が多く見られました。
ここからは、具体的にどのように給料アップをすればいいのか、詳しく解説していきます。
処遇改善手当が支給される施設で働く
保育士の仕事で給料を上げるなら、「処遇改善手当」を受けることができる施設で働くことで年収アップが期待できます。
処遇改善手当とは保育士の労働環境の改善を目的としたもので、「認可保育園」のみを対象としています。
また、処遇改善手当は国から園へ支給され、その後園から保育士へ分配されるのが特徴です。
処遇改善手当を受けるためには保育園側が受給手続きをする必要があります。
処遇改善手当は以下のように3つの種類があり、種類によって対象者が異なります。
対象者 | 要件 | 賃金の改善法 | 加算額の算定法 | |
---|---|---|---|---|
処遇改善等加算Ⅰ | 全職員 | ■基礎分1.施設の平均経験年数に応じた加算率の認定 ■賃金改善要件分 1.賃金改善計画(実績報告)書の提出、具体的な内容を職員に周知 2.基準年度(前年度)の賃金水準との比較 3.キャリアパス要件(職位・職責等に応じた賃金体 系等の整備や資質向上の計画や研修の実施等) | ・基礎分は定期昇給等に充当 ・賃金改善要件分は基本給、手当、賞与又は一時金等により改善 | ■基礎分在籍児童数×処遇Ⅰ単価×加算率 ※加算率は職員の平均経験年数(0~10年以上) に応じて、2~12%で設定 ■賃金改善要件分在籍児童数×処遇Ⅰ単価×加算率 ※加算率は6%(平均勤続年数が11年以上の場合は 7%、キャリアパス要件を満たさない場合は-2%) |
処遇改善等加算Ⅱ | 副主任保育士/職務分野別リーダー等 | 1.賃金改善計画(実績報告)書の提出、具体的な内容を職員に周知 2.基準年度(前年度)の賃金水準との比較 3.職位・職責等に応じた賃金体系等の整備 4.加算対象者は一定の研修の修了等が必要 5.加算額の配分ルールあり(月額4万円対象 者は実際に1人以上確保が必要等) | 基本給又は決まって毎月支払われる手当により改善 | ・4万円×公定価格上の基礎職員数の1/3 ・5千円×公定価格上の基礎職員数の1/5 ※在籍児童数は公定価格上の基礎職員数における年齢別配置基準の職員数の計算の際に使用 |
処遇改善等加算Ⅲ | 全職員 | 1.賃金改善計画(実績報告)書の提出、具体 的な内容を職員に周知 2.基準年度(前年度)の賃金水準との比較 3.2/3以上は基本給・決まって毎月支払われる手当により改善 | 基本給、手当、賞与又は一時金等により改善 | 9千円×公定価格上の基礎職員数 ※在籍児童数は公定価格上の基礎職員数における年齢別配置基準の職員数の計算の際に使用 |
引用:こども家庭庁「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」
処遇改善手当Ⅱのみ、中堅職員や専門リーダーを対象にしていますが、処遇改善手当ⅠとⅢは全職員を対象としています。
処遇改善手当Ⅰは、保育士の平均勤続年数によって月額最大38,000円給料アップするのが特徴です。
処遇改善加算Ⅱは、専門リーダーなどの役職に就くことで、月額最大40,000円給料アップします。
処遇改善加算Ⅲは、賃上げ効果の継続を目的に月額9,000円が給料に上乗せされます。
役職手当がもらえる管理職までキャリアアップする
保育士の仕事を続けながら給料を上げたい場合は、主任保育士や園長などの役職を目指して、キャリアアップするのも一つの方法です。
保育士には以下のような役職に就くことで、処遇改善加算Ⅱや役職手当の対象となります。
- 職務分野別リーダー
- 専門リーダー
- 副主任保育士
- 主任保育士
- 園長
職務分野別リーダーになるためには、約3年の保育士経験が必要で、以下のような都道府県が実施するキャリアアップ研修を受ける必要があります。
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障がい児保育
- 食育、アレルギー
- 保健衛生、安全対策
- 保護者支援、子育て支援
職務分野別リーダーになれば、1人当たり月額5,000円程度が加算されるため、収入アップが期待できます。
ただし、こうした手当は国から園へ支払われるため、必ずしも毎月の給料が5,000円アップするとは限らないので注意が必要です。
また、私立保育園の場合は、園長の血縁者から園長が選ばれることも少なくないため、今の職場でキャリアアップできそうか見極めることも重要です。
もしも、無理そうだと感じた場合は、新設幼稚園の園長候補の求人などに応募してキャリアアップすることも検討してみましょう。
一方、当メディアが実施したアンケートでは職務分野別リーダーが28.6%と最も多いことがわかっています。
このため、キャリアアップの要件を満たしている方は、職務分野別リーダーから挑戦してみるのも良いでしょう。
資格の手当を受ける
保育士の資格を持っていると、保育施設によっては資格手当がつく場合があります。
保育士の資格手当は一般的に5,000〜20,000円程度です。
ただし、すべての保育施設で資格手当が必ずつくわけでもなく、施設ごとに資格手当の金額も異なります。
そのため、これから保育士として就業・転職する場合は、できるだけ保育士の資格手当がつく施設を選んだほうが経済的にも安定しやすいでしょう。
また、資格の手当のほか、「深夜手当」や「休日出勤手当」などもしっかり支給してくれるかどうかも求人を選ぶ際に重要なポイントになります。
より給与が高い保育所へ転職をする
保育士を辞めたくないけど、給料は増やしたいと考えている方には、公立保育所への転職も一つの方法になります。
実は、保育所は私立よりも公立のほうが給与月額が高い傾向があります。
私立の給与月額(常勤) | 301,823円 |
---|---|
公立の給与月額(常勤) | 303,113円 |
給与の差額 | 月1,290円(年15,480円) |
引用:内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」
公立保育所の保育士になれば、地方公務員となり身分が保障され、福利厚生が充実した環境で働けるため、給与以外の魅力もあります。
ただし、公立保育士になった場合、平均2〜3年程度で「異動」があるため、同じ施設で長く働き続けたい方には向きません。
新しい職場を探す際は保育求人が少ない一般的な転職サイトではなく、転職サポートも提供している保育士におすすめの転職サイトを利用しましょう。
保育士の仕事を続けながら副業をする
保育士の仕事を続けながら給料アップを目指す場合は、以下のような保育士におすすめの副業に挑戦してみるのもおすすめです。
- ベビーシッター
- 家事代行
- ピアノ講師
- 塾講師
- ハンドメイド作品の販売
保育士は日頃から子どもやその保護者の扱いに慣れているため、「ベビーシッター」「家事代行」「ピアノ・塾講師」などでも活躍できます。
また、イベントの小道具や衣装作りが得意な方であれば、フリマやオークションを利用してハンドメイド作品を販売してみるのもおすすめです。
ハンドメイド作品の販売なら、自分のペースに合わせて収入アップが目指せるので、本職の保育士の仕事とも両立しやすいでしょう。
ただし、地方公務員に位置する公立保育園の公務員保育士の場合は、地方公務員法第38条によって副業が原則として禁止されているので注意が必要です。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
引用:文部科学省「地方公務員法第38条」
また、私立の保育士であっても、就業規則で副業がNGとされている場合は、副業をすると解雇につながる可能性もあるので気をつけましょう。