乳児院で働くには?必要な資格や知識から働く上で大変なことを解説

乳児院で働くには何が必要かわかる記事

乳児院は経済的な事情や虐待などにより、家庭での養育が困難な乳幼児を24時間365日体制でサポートする児童福祉施設です。

乳児院では乳児保育のスペシャリストとして専門知識を積むことができるため、他の保育施設へ転職する際にも大きな強みとなります。

しかし、乳児院は保育園に比べて求人数が少なく「仕事内容ってどうなってるの?」「どんな資格が必要なの?」と思う方もいらっしゃると思います。

そこで本記事では、乳児院で働く際に必要となる資格やスキルを紹介し、実際の仕事内容についても詳しく解説していきます。

この記事でわかること
  • 乳児院では働くには保育士資格のような対象の資格と乳児保育の知識が必要
  • 施設によってはアルバイトやパートでの求人も出ていることがある
  • 乳児院の保育士求人は月給18万円~23万円ほどの給与が目安となる
  • 乳児院ので働きは特に夜勤によるリズムの変化や保護者サポートが大変
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著者情報
保育のキャリア編集部

保育のキャリア編集部

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また、保育のキャリア編集部は当コンテンツを作成するにあたり、以下のWebサイトに掲載されている情報や論文、自身の知見に基づいて作成しています。

乳児院の児童数を公表するこども家庭庁のWebサイト
当コンテンツを作成する際に参考にしたこども家庭庁のWebページ

また、乳児院の求人情報は、乳児院の求人を保有している求人ボックスや保育のお仕事、保育士バンクの公式サイトを参考にしています。

保育のキャリア編集部は当コンテンツを作成するにあたり、以下の論文の一部を引用しています。

坂元 晴香. ”施設保育士が乳児院での養育を引き受けていくプロセス”. J-STAGE. 2022. https://www.jstage.jst.go.jp/article/reccej/60/2/60_125/_article/-char/ja,(参照 2024-12-7)

目次

乳児院で働くには資格と乳児保育の知識が求められる

乳児院で正社員として働くには、以下の資格を一つと乳児保育の知識が求められます。

  • 保育士資格
  • 医師免許
  • 看護師資格
  • 栄養士資格
  • 調理師資格
  • 児童指導員任用資格
  • 社会福祉士※
  • 精神保健福祉士※

※家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)の場合

また、乳児院では原則として1歳未満の乳児を対象としていますが、3歳まで入所しているケースもあります。

乳児院は、原則として乳児(1歳未満)を入所させて養育する施設であるが、実際には2歳あるいは3歳まで入所していることも多く、低年齢児を養育すると いうところに特色がある。

引用:厚生労働省「乳児院運営指針」

つまり、1歳までの乳児を対象とした転職先を探している方も、施設によっては1歳から3歳までの幼児を対象とした保育に携わる可能性もあるということです。

乳児院で働く保育士は乳児のスペシャリストというイメージがありますが、実際には幼児にも対応しているため、一般的な保育所での勤務経験も生かしやすい職場です。

さらに、乳児院には以下のような特徴もあるため、これから応募を検討している方は事前によく確認しておきましょう。

仕事は子どもの養育から親子関係のサポートまで幅広い

乳児院の仕事は子どもの養育から親子関係のサポートまで、職員が幅広く対応しなければいけません。

  • 一般的な保育活動(お散歩、読み聞かせ、遊びなど)
  • 生活のサポート(ミルク、着替え、食事の介助など)
  • 就寝後の定期巡回(子どもたちの安全確認)
  • 保護者の育児相談やアドバイス(入所前や退所後も含む)
  • 親子関係のサポート
  • 里親へのサポート
  • 家事業務(掃除や洗濯など)
  • 保育記録などの事務作業

特に、乳児院は一般的な保育所と違い「入所前」や「入所後」のサポートがあるところが大きな特徴です。

別々に暮らしていた親子が上手く信頼関係を築いていけるように、退所後も職員が間に入り長期的にサポートをするケースも少なくありません。

そのため、「他人の家庭にあまり深入りしたくない」という方は、乳児院で働くには向いていない可能性があるので、慎重に検討する必要があります。

配置基準では保育士を配置する義務はない

乳児院には医者や看護師の配置基準が定められていますが、保育士については必ず配置しなければいけないという義務がありません。

実際、厚生労働省の資料では乳児院の職員配置の最低基準は以下のようになっています。

スクロールできます
乳児10人以上・乳児院には、小児科の診療に相当の経験を有する医師又は嘱託医、看護師、栄養士及び調理員を置かなければならない。ただし、調理業務の全部を委託する施設にあっては調理員を置かないことができる。
・看護師の数は、おおむね乳児の数を1.7で除して得た数(その数が7人未満であるときは7人)以上とする。 
・看護師は、保育士又は児童指導員(児童の生活指導を行う者をいう。以下同じ。)をもってこれに代えることができる。ただし、乳児10人の乳児院には2人以上、乳児が10人を超える場合は、おおむね10人増すごとに1人以上看護師を置かなければならない。
乳児10人未満・嘱託医、看護師及び調理員又はこれに代わるべき者を置かなければならない。
・看護師の数は、7人以上とする。ただし、その1人を除き、保育士又は児童指導員をもつてこれに代えることができる。

引用:厚生労働省「児童福祉施設最低基準について(社会的養護関係) 」

保育士は「看護師の代わりとして配置できる」とされているため、看護師不足の乳児院では大きな戦力として活躍が期待されます。

正社員だけではなくパートやアルバイトも働ける

乳児院は正社員だけではなく、パートやアルバイトも募集しています。

アルバイトやパートの場合でも、基本的に保育士資格は必須になりますが、施設によっては資格がなくても働ける場合もあります。

未経験でも働けるケースは、主に「保育士資格を取得中の学生の方」や「0~2歳児の子育て経験のある方」です。

乳児院の給与は職種によって異なる

乳児院での給与は職種によってそれぞれ異なります。

実際に、求人検索サイト「求人ボックス」で乳児院の求人を調べたところ、各職種の給与の目安は以下のとおりとなりました。

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職種給与
看護師月給20万円~25万円前後
栄養士月給20万円~25万円前後
調理員月給18万円~22万円前後
保育士(正社員)月給18万円~23万円前後
保育士(パート・アルバイト)時給1,000円~1,500円前後

※2024年10月30日時点の「求人ボックス」を参考にしています。

乳児院では保育士や調理員よりも看護師や栄養士の給与がやや高めです。

地域によっては給料の差が大きく、首都圏や大都市の求人は高め、地方の求人は給料が安い傾向も見られます。

乳児院の求人がある転職サイトは少なめ

乳児院への就職・転職の難点として、乳児院の求人がある転職サイトが少ないことが挙げられます。

乳児院の求人がある保育士転職サイトを調べたところ、保育士バンクや保育のお仕事といった転職サイトでも50件未満しか取り扱いがありませんでした。

乳児院の求人数転職サポート
保育士バンク32件あり
保育のお仕事5件あり
求人ボックス4,932件なし

※乳児院の求人数は2024年12月1日時点の情報を参考にしています。

一方、求人ボックスは面接対策や求人紹介などの転職サポートがありませんが、乳児院の求人が3,677件もヒットし、一度で大量の職場をチェックすることができました。

このように乳児院の求人は、転職サイトによって求人数が大きく異なるため、まず求人ボックスからチェックしてみることをおすすめします。

また、求人ボックスと保育のお仕事や保育士バンクを併用して利用することで、面接対策や提出書類の添削を受けつつ乳児院の求人を探すこともできますよ。

乳児院で働くやりがい

乳児院で保育士として働く際には、以下の3つの働きがいが実感できます。

  1. 親の代わりとなって養育に携わる
  2. 乳児の成長を近くで感じられる
  3. 社会福祉に貢献している役割を実感しやすい

乳児院の仕事のどのような点に魅力があるのか確認しておきましょう。

親の代わりとなって養育に携わる

乳児院での働きは保育士が親の代わりとなって養育します。

大規模な保育所は子ども一人ひとりと丁寧に接する機会が少なく、人によっては流れ作業のような保育スタイルに不満に感じることもあるでしょう。

乳児院では担当者と子どもに密接な関係性を築くことができるように、一人ひとりの子どもに担当者がつく担当性保育(育児担当性)が取り入れられています。

そのため、家庭のような穏やかな環境でじっくり子どもと向き合えるのでやりがいを感じやすいです。

ただし、乳児院で働く担当児の退所を経験したことがある施設保育士を対象として研究では、担当児の退所に伴い寂しさや不安などの喪失体験に直面する傾向にあることがわかっています。

本研究でも示されたように乳児院養育の特性上,施設保育士は担当児の退所を喪失体験として経験する可能性が極めて高い。

引用:J-STAGE「施設保育士が乳児院での養育を引き受けていくプロセス」

このように、乳児院での働きは喪失体験をするほどやりがいがありますが、最初のうちは心理的にネガティブな影響を受けることに苦労することが予測されます。

また、こども家庭庁の「施設入所児童の推移」によると、各県の乳児院の児童数は首都圏や一部の大都市を除きほとんどが50名以下となっています。

北海道52人
青森18人
岩手24人
宮城40人
秋田18人
山形17人
福島9人
茨城61人
栃木67人
群馬30人
埼玉182人
千葉84人
東京294人
神奈川159人
新潟26人
富山8人
石川22人
福井21人
山梨22人
長野28人
岐阜30人
静岡51人
愛知100人
三重32人
滋賀29人
京都58人
大阪243人
兵庫123人
奈良16人
和歌山29人
鳥取29人
島根22人
岡山12人
広島26人
山口19人
徳島17人
香川18人
愛媛28人
高知21人
福岡104人
佐賀13人
長崎19人
熊本45人
大分10人
宮崎26人
鹿児島40人
沖縄9人
全国合計2,351人

引用:こども家庭庁「施設入所児童の推移」

大規模保育所では保育士として満足感を得られなかった方も、小規模な乳児院であれば仕事のやりがいを見つけられる可能性があります。

このため、乳児院で働くには、大人数でワイワイ子どもたちと過ごすより、一人ひとりと丁寧に向き合いたいという方に向いています。

乳児の成長を近くで感じられる

保育士が乳児院で働くと、乳児の細かな成長も近くで実感できることがやりがいにつながります。

乳児は1年間で一人で座ったり、ハイハイをしたり、つかまり立ちをしたり、幼児とは違ったさまざまな成長が見られます。

一人の人間の成長に深く携われていると実感できることで、保育士としてのやりがいを強く感じる方もいるでしょう。

ただし、乳幼児は一瞬目を離しただけで命に係わる不慮の事故につながる恐れもあるため、責任感の重さを感じてしまう人も少なくありません。

実際、こども家庭庁の「年齢別の死亡事故発⽣⽐率」で0歳が全体の28%でトップとなっています。

0歳28%
5歳~9歳23%
10~14歳22%
1歳11%
2歳6%
3歳6%
4歳4%

引用:こども家庭庁「⼦どもの不慮の事故の発⽣傾向」

0歳児は誤えんやうつぶせ寝による窒息事故が多いため、想定外の出来事が起きても冷静に対処することも必要となります。

このため、子どもの成長より乳児保育のネガティブな部分ばかりが気になってしまう方は、乳児院で働くには向いていない可能性があります。

社会福祉に貢献している役割を実感しやすい

乳児院はさまざまな事情により家庭での養育が困難な乳児を預かるという特色から、社会福祉に貢献している役割を実感しやすいです。

自身の仕事が社会に役立っていると感じることにより、自分の仕事にやりがいを感じやすくなる方も少なくありません。

一方、社会貢献に対してあまり関心がない場合は、乳児院で働くことにあまり価値観を見出せない可能性もあります。

このため、乳児院で働くには、どちらかというと社会貢献に前向きな考えを持っている方のほうが相性が良いといえるでしょう。

乳児院で働くときに大変なこと

乳児院で働くときに大変なことは「夜勤によって生活のリズムが崩れることがある」と「複雑な事情を持つ保護者のサポートが求められること」です。

当然、乳児院でも職場の人間関係が大変なこともありますが、ここでは特に乳児院で働く上で注意したいポイントについてご紹介しています。

夜勤によって生活のリズムが崩れることがある

乳児院で働く場合は、夜勤によって生活リズムが崩れやすくなる恐れがあります。

乳児院は24時間365日体制で乳幼児をサポートするという特徴があるため、「日勤」と「夜勤」の両方に対応しないといけないからです。

このため、家庭の事情で日勤だけ働きたいという方や、朝型体質で夜勤がきついという方にとっては乳児院で働くにくさを感じる可能性があります。

乳児院で働くには「夜勤」に対応できるかどうかという点が重要になるため、応募前に日勤と夜勤の交代勤務でも大丈夫かよく考えておきましょう。

複雑な事情を持つ保護者のサポートが求められる

乳児院では複雑な事情を持つ保護者のサポートが求められるため、言動には細心の注意が必要となります。

実際、厚生労働省の調査では乳児院に入所することになった主な理由として、「母の精神疾患等(23.2%)」が最も多くなっています。

母の精神疾患等23.2%
その他16.6%
母の放任・怠だ15.7%
破産等の経済的理由6.6%
母の虐待・酷使6.2%
養育拒否5.4%
父の虐待・酷使4.0%
母の拘禁3.7%
母の就労2.9%
両親の未婚2.8%
母の入院2.6%
父母の不和2.2%

引用:厚生労働省「児童養護施設入所児童等調査結果」

また、「その他(16.6%)」としては、障がいや病気など子ども側の事情によって入所しているケースが考えられます。

乳児院では保護者の方も不安や心配などからデリケートな状態になっていることが多いため、デリカシーのない言動は慎まないといけません。

保護者の方の気持ちに寄り添い、丁寧な説明や対応をすることで信頼関係を構築していくことが重要です。

また、保護者の方が悩みを抱えている場合は、それぞれの悩みを解決するのに適した乳児院のサービスを紹介するのも一つの方法です。

  • 電話相談(赤ちゃん110番)
  • 育児相談
  • 里親相談・養育家庭相談
  • 育児体験教室
  • ショートステイ(お泊まり)事業
  • 病児デイケア(病児保育)
  • デイ・サービス(日中のお預かり)
  • 企業委託型保育サービス
  • 子育てサークル
  • 里親サロン

日頃から乳児院にどのようなサービスがあるのかよく理解して、いつでも保護者の方のニーズに合った提案をできるように準備しておきましょう。

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