訪問保育は保護者の自宅で子どもを一対一で保育する事業です。
2015年に施行された子ども・子育て支援新制度によって追加された地域型保育と呼ばれる保育形態に含まれます。
地域型保育には「家庭的保育(保育ママ)」「小規模保育」「事業所内保育」「居宅訪問型保育」があり、訪問保育は居宅訪問型保育に該当します。
居宅訪問型保育 障害・疾患などで個別のケアが必要な場合や、施設がなくなった地域で保育を維持する必要がある場合などに、保護者の自宅で1対1で保育を行います
引用:こども家庭庁「よくわかる「子ども・子育て支援新制度」」
本記事では比較的新しい保育形態である訪問保育について詳しくご紹介していくのでぜひ参考にしてください。
- 訪問保育は3歳未満の乳幼児を対象に一対一で保育を行う
- 保育士資格や保育士と同等の知識があれば他に必要な資格はない
- ベビーシッターとは異なるため対象となる年齢や保育時間に違いがある
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訪問保育とは?
訪問保育(居宅訪問型保育事業)は、保育が困難な家庭への支援を目的とした事業です。
子育てを量と質から支えるため2015年に施行された子ども・子育て支援新制度では地域型保育に分類されています。
地域型保育の中でも障害や疾病を抱える子どもや、地域に保育施設がない家庭に対して、保護者の自宅で一対一の保育を行うという役割があります。
障害・疾患などで個別のケアが必要な場合や、施設が無くなった地域で保育を維持する必要がある場合などに、保護者の自宅で1対1で保育を行う事業。
引用:厚生労働省
保育のキャリアの見解では、「人口が少なく保育所が廃統合された地域の待機児童問題を解決すること」を目的としている可能性があります。
具体的には、保育従事者が保護者の自宅に訪問し、子どもの発達状況や家庭環境に合わせた個別のケアを行います。
3歳未満の乳幼児を対象に家庭的な保育を行う
訪問保育(居宅訪問型保育事業)は、原則として3歳未満の乳幼児を対象とした保育サービスです。
保育士として訪問保育に携わる場合は、個別支援を必要とする家庭に寄り添いながら、家庭的な環境の中で保育を行うことになります。
また、訪問保育を受けられるのは、単に「3歳未満」という年齢条件を満たすだけではなく、以下のような特別な事情を抱えた家庭に限られます。
原則として3歳未満の保育を必要とする乳幼児であって、次のいずれかに該当すると市町村長が認めたもの
①障害、疾病等の程度を勘案して集団保育が著しく困難であると認められる場合
②保育所の閉鎖等により、保育所等による保育を利用できなくなった場合
③入所勧奨等を行ってもなお保育の利用が困難であり、市町村による入所措置の対象となる場合
④ひとり親家庭の保護者が夜間・深夜の勤務に従事する場合等、保育の必要の程度及び家庭等の状況を勘案し必要な場合
⑤離島その他の地域であって、居宅訪問型保育事業以外の地域型保育事業の確保が困難である場合
引用:厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」
訪問保育は一般的な保育園とは違い、上記のような特別な事情がある乳幼児と一対一で向き合う必要があります。
つまり、子どもの発達状況や家庭環境に合わせた柔軟な保育が求められます。
特に、障害や疾病のある子どもを担当する場合は、医療的ケアや発達支援に関する知識も必要です。
また、家庭的な保育を提供することもあり、保護者とのコミュニケーションも重要となってきます。
保護者と信頼関係を築きながら協力して子どもの成長を支える役割が期待されます。
ベビーシッターとは対象年齢や保育時間などが異なる
訪問保育とベビーシッターは自宅で行う保育という点では共通していますが、対象年齢や保育時間、保育方針が大きく異なります。
訪問保育は国の制度の一環として運営され、主に3歳未満の子どもを対象とし、公的な基準に基づいた保育を行います。
一方、ベビーシッターは事業者や個人によってサービス内容が異なり、年齢制限がなく、学童期の送迎などにも対応している場合が多いです。
以下の表に、訪問保育とベビーシッターの主な違いをまとめているのでぜひ参考にしてください。
訪問保育 | ベビーシッター | |
---|---|---|
対象年齢 | 原則3歳未満 | 幅広い年齢に対応(0〜12歳ほどが多い) |
保育時間 | 一般的な保育時間と同じ | 保護者の希望によって変動(24時間対応しているサービスもある) |
保育者の体制 | 複数人が交代制で担当することが多い | 同じシッターが一対一で継続的に担当することが多い |
訪問保育は公的な制度に基づいて運営されるため、保育所と同様の方針で進めるのが基本です。
一方、ベビーシッターは家庭のニーズに応じて柔軟な対応が可能で、送迎や家事支援を含む場合もあります。
どちらのサービスが適しているかは、子どもの年齢や家庭の希望する保育時間によって変わります。
訪問保育は公的な枠組みの中で安定した環境で働ける点がメリットです。
ただし、柔軟な働き方を希望する方は、ベビーシッターの仕事も選択肢になります。
訪問保育としての働き方
訪問保育の仕事は、一対一で子どもを丁寧にケアしながら、保育所保育方針に基づいて進められます。
保育園の働き方とは異なり、家庭環境に合わせた柔軟な対応が求められる点が特徴です。
訪問保育を転職先に考えている保育士は、以下の訪問保育士ならではの働き方について理解しておくことが大切です。
ここでは、一つひとつの項目について詳しくご紹介していきます。
仕事内容は保育所保育方針に基づいた保育内容を行う
訪問保育の仕事内容は保育所とほぼ同じですが、一対一の保育に特化している点が特徴です。
厚生労働省が定める「保育所保育指針」に準じており、子どもの発達支援や安全確保、遊びの重要性などが基本方針となります。
ただし、保育園と違い、家庭環境や子どもの発達状況や個性に合わせた柔軟な対応が求められます。
以下では、訪問保育の1日のスケジュールの具体例をご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
体温や食欲、睡眠時間を把握して当日の計画を調整します。
3歳未満児に合わせて室内遊びや戸外活動を行います。
離乳期の場合は発達段階を意識して関わります。
お昼ごはんは保護者が用意してくれたご飯を食べさせます。
ミルクや離乳食の場合は誤嚥予防に注意しましょう。
子どもの体調に合わせて室内遊びや戸外活動を行います。
その日の子どもの様子や気になる点を共有します。
上記のようなスケジュールを子どもの発達状況や個性に合わせて実施していきます。
つまり、訪問保育で働くには「保育園と同じ内容を実施しつつ、個別のニーズに合わせる」ことが重要です。
資格不要だが保育士同等の知見と研修の修了が求められる
訪問保育の仕事に就くために、保育士資格は必須ではありません。
しかし、保育士と同等の知識・経験があると市町村長に認められることが条件になります。
必要な研修を修了し、保育士、保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者
引用:こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」
そのため、訪問保育を行うには指定の研修を受講し、必要なスキルを身につけることが求められます。
「職員の資質向上・人材確保等研修事業の実施について」(平成27年5月21日付雇児 発0521第19号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)(以下「国通知」という。) に基づき、居宅訪問型保育事業の保育従事者を対象に、その資質の向上を図るため、居宅訪問型保育に必要な保育の知識や技術の習得を目的として研修を行います。
引用:公益社団法人全国保育サービス協会「令和3年度居宅訪問型保育基礎研修申込要領 」
これは訪問保育が家庭という閉ざされた環境で一対一の保育を行うため、子どもの安全を守る責任が大きいからです。
そのため、自治体は研修の受講を重視し、専門知識を持つ保育者を確保することを目的としています。
また、緊急時の対応や、小児救急の知識を身につけることも不可欠です。
訪問保育を考えている保育士は、必要な研修を受けることで、より専門性を高めながら活躍できる環境を整えることが重要です。
訪問保育の平均月給は25万〜30万円ほど
訪問保育の給与相場は、月額25万~30万円程度とされています。
これは、求人情報サイト「求人ボックス」のデータから把握できます。
以下では、保育のキャリア編集部が求人ボックスから取得した地域別の訪問保育で働く保育士の平均月給をまとめているのでぜひ参考にしてください。
地域 | 平均月給 |
---|---|
大阪府 | 25.9万円 |
神奈川県 | 31.0万円 |
千葉県 | 26.7万円 |
東京都(練馬区) | 29.2万円 |
参照:求人ボックス
訪問保育は国や自治体の認可を受けており、処遇改善手当の支給対象となるため、一定の補助金が給与に反映される仕組みになっています。
ただし、自治体や事業者の運営方針により、給与への反映の仕方には違いがあります。
地域型保育事業は、利用者負担額及び地域型保育給付費により運営をすることになります。
引用:佐賀市「地域型保育事業 よくある質問 (Q&A )」
利用者負担額(保育料)は、児童を養育している扶養義務者の市町村民税額によって市が額を決定し、保護者が事業者に支払うことになります。
地域型保育給付費は、公定価格から利用者負担額を差し引いた金額を指し、市が事業者に支払います。(本来は保護者への個人給付ですが、事業者が代理受領することになっています。 これを「法定代理受領」と言います。)
また、保育士資格が必須ではないものの、保育士と同等の知識や研修の受講が求められるケースが多いです。
実際の給与は勤務先の制度や雇用形態(正社員・契約社員・パート)、保育士資格の有無、担当する子どもの状況によっても変動します。
地域差はありますが、訪問保育で働く際の給与相場として25万~30万円程度が目安になります。
訪問保育で条件の良い職場で働きたい方は、保育士転職サイトから給与や福利厚生などの労働条件が良い職場を紹介してもらいましょう。
訪問保育で働くメリットは個別支援のしやすさと保護者から直接感謝されやすいこと
訪問保育の大きな魅力は、「個別支援のしやすさ」と「保護者の感謝を直接得られること」です。
子どもと一対一で向き合う時間が長く、保護者とのコミュニケーションも密接になるため、より丁寧な保育ができます。
また、障害や疾病のある子どもに対しても、その子に合った支援を十分に行うことができます。
保育園では難しい個別対応も可能で、子どもの発達に深く関わることができる点が大きな魅力です。
訪問保育は、「一人ひとりに寄り添う保育がしたい」「より深く子どもの成長を支えたい」と考える保育士にとって、大きなやりがいを感じられる仕事となるといえます。
ここでは訪問保育の保育士として働くやりがいや魅力をご紹介するのでぜひ参考にしてください。
家庭環境を活かして子どもの発達や体調に寄り添った保育ができる
訪問保育は子どもの発達や体調に合わせた丁寧な保育ができます。
一対一の保育のため、子ども一人ひとりに寄り添い、家庭環境を活かした柔軟な対応ができます。
例えば、子どもが普段過ごしている部屋で、慣れ親しんだおもちゃを使いながら遊ぶことで、安心感を持たせることができます。
保育士にとっても、集団保育のように時間に追われることなく、個々の成長にじっくり向き合える環境です。
特に、発達に不安がある子どもの場合は、その子のペースに合わせたサポートを行うことで、無理なく成長を促すことができます。
保護者から直接感謝されることでやりがいや社会貢献を実感できる
訪問保育は誰かの役に立っている実感を得やすいです。
家庭との距離が近く、保護者から感謝を直接受け取る機会があるからです。
保護者と日々やり取りをするなかで、子どもの成長を一緒に見守り、喜びを共有することができます。
例えば、障害や疾病のある子どもを担当した際には、「家ではこんなに楽しそうに遊ぶことがなかった」「毎日安心して預けられる」といった言葉をもらうこともあります。
また、ひとり親家庭の支援では、「仕事と育児の両立ができるのは先生のおかげです」といった感謝の声を直接受け取ることも少なくありません。
保育園では保護者と話せるのは送り迎えの短い時間が多いですが、訪問保育ではじっくり関係を築くことができるのも魅力です。
そのため、「自分の保育が誰かの役に立っている」という実感を得やすく、保育士としてのやりがいや社会貢献を強く感じられる仕事といえます。
訪問保育で働くと大変なのは責任が大きいこと
訪問保育は一般的な保育園とは異なり、子どもと一対一で向き合える点がやりがいの一つです。
一方で、その分、保育士としての責任が大きくなります。
一人で子どもの安全を確保しなければならない点や、幅広い専門知識が求められる点は、訪問保育ならではの大きな課題です。
保育士の働き方として訪問保育を考えている方は、特に以下の2つのポイントを理解しておくことが重要です。
ここでは、訪問保育で働く上で押さえておきたい内容を詳しくご紹介していくのでぜひ参考にしてください。
一人で対応するためケガや事故を考えると常に気が抜けない
訪問保育では、保育士が単独で子どもを守る責任を負います。
保育園のように他の職員と協力できる環境ではないため、万が一の事故や体調不良に自分が即座に対応する必要があります。
例えば、以下のように対応が遅れると重大な事故やケガにつながることもあるため、保育中に気を抜くことができません。
- 食物アレルギーの発症
- 転倒によるケガ
- 突然の発熱など
そのため、訪問保育では応急処置の技術や、緊急時の連絡体制を把握しておくことが必須です。
特に、保護者が不在の時間帯に何か起きた場合の対応手順を事前に確認しておくことが求められます。
乳幼児の発達や小児保健など幅広い知識が求められる
訪問保育は成長が早い3歳未満の子どもを保育するため、発達から小児保健まで幅広い知識が求められます。
子どもは一人ひとりの成長ペースが異なるため、個別対応の知識が必要です。
例えば、離乳食の進め方や歩行の開始、言葉の発達などは、子どもによって進み方が個人差があります。
また、障害や医療的ケアが必要な子どもには、適切なリハビリ支援や予防策も考慮する必要があります。
そのため、訪問保育に携わる保育士は、小児保健や発達支援に関する最新の知識を学び続けることが大切です。
特に、医療機関やリハビリ専門職との連携を意識し、子どもにとって最適なケアを提供することが求められます。