院内保育とは?仕事内容から1日のスケジュールまで働き方を解説

院内保育とは?仕事内容から働き方まで解説

院内保育は医師や看護師が安心して仕事に集中できる環境を支えるという重要な役割がある仕事です。

医療従事者の長時間勤務や夜勤に対応するため、24時間体制を導入している施設も少なくありません。

また、夜勤手当や柔軟な保育体制により、他の保育施設では得られない魅力やメリットを提供しています。

本記事は院内保育の基本的な仕組みから実際の働き方、給与事情、さらにはメリット・デメリットについて詳しく解説します。

院内保育がどんな職場なのか気になった保育士の方は、自身に合った働き方ができるのか確認する際にぜひ参考にしてください。

この記事の要点
  • 院内保育は医療施設内や隣接した場所に設置された保育施設
  • 医師や看護師が安心して働けるためにあり24時間体制を導入している施設も多い
  • 夜勤があると手当により一般的な保育よりも給料が高くなることもある
当コンテンツについて

※当コンテンツは保育のキャリアが定める広告掲載ポリシー及びプライバシーポリシーに基づいて作成・管理されています。
※当コンテンツはファーストパーティクッキーを使用しており、サイト訪問者の利便性の向上やサイトパフォーマンスの改善を目的にGoogleアナリティクスを活用しています。
※本記事に誤りやご意見がございましたら、こちらの問い合わせフォームよりご連絡ください。管理人が内容を確認後に必要に応じて内容を訂正させていただきます。

著者情報
保育のキャリア編集部

保育のキャリア編集部

保育のキャリア編集部は当メディアを1年以上運営する中で、保育士の転職サイトや職場での人間関係、残業、年収に関する調査を1,401名の保育士や保育士経験者にアンケートを実施してきました。毎日チェックしている保育士向け転職サイトの変化やアンケート調査で得られた保育士の声や自身がエージェントサービスを利用してきた経験を当サイトのコンテンツに反映させています。編集部は保育人材が思う理想的な働き方の実現するために保育のキャリアを運営しています。

当コンテンツは構成・執筆・編集を保育のキャリア編集部が担当し、アイキャッチデザインの作成を外注デザイナーが担当して作成されています。

また、保育のキャリア編集部は以下のWebサイトに掲載されている情報や自身の知見に基づいて当コンテンツを作成しています。

熊本大学病院のWebページを参考にした証拠
当コンテンツを作成する際に参考にした熊本大学病院のWebページ
目次

院内保育とは病院内や近隣で医療従事者の子どもを預かる保育施設のこと

院内保育は医療従事者の子どもを預かる保育施設です。

施設は病院の敷地内や隣接に設置されることが多く、院内保育に子どもを預けることで医療従事者が離職することなく安心して働くことができます。

熊本大学病院では、育児休業取得者・産休取得者の職場復帰支援や保育施設がないことを理由とする職員の離職防止などを目的として、平成25年5月1日(水)に院内保育所を開園しました。

引用:熊本大学病院「院内保育所について」

院内保育の開園理由や国が院内保育事業を支援する理由から、看護師や医師の出産や育児による離職の防止と職場復帰をしやすくすることを目的とした施設と考えられます。

厚生労働省は、医師や看護師等の医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、都道府県に対する国庫補助事業として、医療機関における病院内保育所の運営費の一部を補助する「病院内保育所運営事業」や、病院内保育所の新設・増改築等に要する工事費等を補助する「病院内保育所施設整備事業」を実施してきた。

引用:総務省「医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-2」

また、院内保育は子どもの身の回りのお世話をしたり、入院中の不安やストレスなどのメンタルケアをする「病棟保育士」の働き方と混同されがちです。

ここでは、院内保育についてしっかりとわかるように以下の項目について詳しくご紹介していきます。

  1. 利用者は医師や看護師などの医療従事者
  2. 24時間体制での運営のため夜間保育や早朝保育がある
  3. 休日診療がある病院では土日も開園する
  4. 保育士として働くので医療的な知識は必要ない

利用者は医師や看護師などの医療従事者

院内保育の利用者は、主に以下のような病院で働く医療従事者が中心です。

  • 医師
  • 看護師
  • 検査技師など

上記の職種は長時間の勤務や夜勤があるため、通常の保育施設では対応しきれないケースが多いのが現状です。

例えば、保育園は夕方の17時〜18時頃に閉園することが一般的ですが、医療従事者は閉園時間までに業務が終わらないことも少なくありません。

院内保育はこうした医療従事者特有の勤務体系をサポートするために設置されています。

長時間保育や24時間保育など柔軟な体制を取ることで、保護者が安心して仕事に集中できるということです。

このように、院内保育で働く保育士がいることで医療従事者が安心して働けるため重要な役割を担っていることがわかります。

24時間体制での運営のため夜間保育や早朝保育がある

医療従事者の勤務時間には夜勤や早朝勤務が含まれるため、院内保育では24時間体制を導入している施設が多く見られます。

実際に、院内保育で夜間保育を実施している施設は、複数の年度の調査において50%を超えることが確認されています。

スクロールできます
病院総数うち院内保育を実施しているうち夜間保育有うち病児保育有
平成23年8,6053,259(37.9%)1,688(51.8%)557(17.1%)
平成26年8,4933,523(41.5%)1,903(54.0%)668(19.0%)
平成29年8,4123,685(43.8%)1,947(52.8%)783(21.2%)
病院の職員のための院内保育サービスの状況

引用:厚生労働省「院内保育等の推進について」

保育士の夜勤では、保護者が安心して仕事に集中できるよう、子どもを寝かしつけたり夜間の見守りを行ったりするのが主な業務です。

24時間体制を維持するため、保育士は交代制で勤務し、特定の時間帯に負担が集中しないよう配慮されています。

こうした運営の仕組みによって、医療従事者は不規則な勤務スケジュールでも子どもの保育を安心して任せられる環境が整っています。

休日診療がある病院では土日も開園する

院内保育では土日も開園していることがあります。

休日診療を行う病院では、土日も患者を受け入れており、医療従事者のシフトに合わせて子どもを土日に預ける保護者が一定数いるからです。

保育士も週末勤務が求められることが多いですが、土日は平日に比べて保育ニーズがやや落ち着く場合があります。

ただし、保育施設によっては保護者の急な呼び出しにより、緊急一時保育に対応する必要があるため、柔軟なシフト管理が欠かせません。

例えば、急な対応が必要な場合でも、最小限の職員で効率よく保育を行う体制を整えることが重要です。

また、休日保育では平日とは異なる雰囲気で子どもと過ごせることもあります。

子どもが少人数の場合、一人ひとりと向き合う時間が増え、個別対応がしやすい環境になることも特徴です。

保育士として働くので医療的な知識は必要ない

院内保育で働くために医療的な知識は求められません。

なぜなら、院内保育では特別な医療行為を行うことはないからです。

必要な資格は他の保育施設と同じく保育士資格のみであり、「医療に詳しくないと働けないのでは」と心配する必要はありません。

保育内容に関しても通常の保育施設と同様で、医療的な処置や特別なケアは行いません。

ただし、医療機関に併設された保育所であるため、病院独自のルールや感染症対策を理解する必要があります。

院内保育としての働き方

院内保育は定員が少ない施設が多く、一人ひとりと丁寧に向き合うことができます。

  1. 仕事内容は少人数を対象とした縦割り保育
  2. 院内保育の1日のスケジュール
  3. 院内保育で働く保育士の給与は20〜21万円ほどが多い印象

多くの施設は、病院の規模や保護者の働き方に合わせて柔軟にサービスを提供しています。

仕事内容は少人数を対象とした縦割り保育

小規模施設では同じ部屋で0歳児から就学前の子どもを保育する「縦割り保育(異年齢保育)」を行うことがあります。

縦割り保育は、年齢の異なる子ども達が一緒になって遊び、関わる中で、年上の子が年下の子を気にかけ行動したり教えたり、年下の子は年上の子に憧れて真似をしたりします。

引用:北海道 厚真町「【3・4・5歳児の縦割り保育の目的について】」

つまり、保育園に多い同じ学年の子どもを集めて保育する横割り保育(同年齢保育)とは異なります。

縦割り保育では、年上の子どもが年下の子どもを助けたり教えたりする場面が多く見られます。

例えば、3歳の子どもが2歳の子どもにおもちゃの使い方を教えるなど、年齢を超えた自然な交流により社会性が育まれます。

また、院内保育で少人数制ということもあり、異なる年齢の子ども同士が自然とコミュニケーションを取れる環境で保育を進めていきます。

院内保育の1日のスケジュール

院内保育の1日のスケジュールは、病院ごとの勤務体制や利用者数によって変わります。

以下では、院内保育の1日のスケジュール例をご紹介しているのでぜひ参考にしてください。

STEP
早朝(6:00頃~)

開園準備と子どもの受け入れ。保護者のシフト開始に合わせて預かる

STEP
午前(9:00頃~)

朝の会や自由遊び。小規模なので個別対応もしやすい

STEP
昼(12:00頃~)

昼食やお昼寝の時間。医療従事者の引き継ぎ時など、出入りが多くなることもある

STEP
午後(15:00頃~)

おやつを食べて室内や戸外で活動。施設内に園庭がなくても、近隣を散歩する機会をつくる場合がある

STEP
夜(18:00頃~)

保護者の勤務形態によってはここから夜勤シフトが始まるので、必要に応じて子どもたちを夕食後も保育

STEP
深夜(22:00以降)

夜間保育を受け入れる施設では深夜勤務の保育士が交代で対応。就寝環境を整え、子どもたちの安全を見守る

STEP
早朝(翌5:00頃~)

子どもたちが起きはじめる時間帯。保護者が夜勤を終えて迎えに来ることもある

このように、病院側の勤務サイクルに合わせて保育内容を変える必要があります。

子どもが少人数でも夜勤や早朝対応があるため、保育士にも柔軟さが求められます。

院内保育で働く保育士の給与は20〜21万円ほどが多い印象

院内保育の給与は、地域や病院の規模、運営元(病院が自ら運営している場合か、外部の保育事業者に委託している場合か)によって幅があります。

保育のキャリア編集部が保育士転職サイトから院内保育の求人33件を調べたところ、最低月収の平均から最高月収の平均が189,761円〜228,215円ということがわかりました。

以下の表では、調査結果や求人検索エンジンの求人ボックスに表示されている院内保育の平均給与を、保育士全体の平均給与と比較しているのでぜひ参考にしてください。

スクロールできます
平均給与
求人ボックス250,000円
転職サイトから算出※189,761円〜228,215円
保育士全体271,400円

保育士全体の平均給与は厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」より算出しています。

※転職サイトから算出について

院内保育の平均給与189,761円〜228,215円は保育のキャリア編集部が以下の転職サイトから算出しました。

院内保育の正社員求人33件の最低月収と最高月収から平均値を計算しました。

院内保育の給与は保育士全体と比べると低めということがわかります。

編集部の調査によると、月給33万円と保育士の給与の中で高給与の職場も確認できました。

夜勤や深夜業(午後22時から翌5時)を担当すると割増賃金が適用され、基本給にプラスαの手当が支給される場合があります。

夜勤の頻度や条件次第では、月給が数万円上乗せされることも珍しくありません。

院内保育で働くメリット

院内保育には、一般的な認可保育園や保育施設では得られない魅力があります。

  1. 柔軟な運営が行われるため準備が大変な行事が少なく残業も少なめ
  2. 夜勤手当をもらうと一般的な保育施設よりも給料が高くなる
  3. トラブルがあったときに保護者(医者や看護師)に連絡が取りやすい

保護者がすぐ近くにいる安心感や、小規模で落ち着いた保育環境が大きなポイントです。

柔軟な運営が行われるため準備が大変な行事が少なく残業も少なめ

院内保育は準備が大変な行事が少ないため、企画や準備にかかる残業も少なめになります。

一般的な保育園では、年間を通じて以下のように行事で充実していることが多いです。

  • 運動会
  • 発表会
  • 季節ごとのイベントなど

しかし、行事を開催するにあたり企画から練習、装飾の準備が必要なため、保育士の残業が増える要因になることがあります。

院内保育では行事を最小限に設定している施設が多いのが特徴です。

医療従事者のシフトに合わせた柔軟な運営が求められるため、大がかりな練習や準備を必要とする行事は少なくなります。

例えば、クリスマス会や誕生日会といった小規模で短時間のイベントが中心で、大人数を対象にした運動会や発表会はほとんど行われません。

保育士を辞めたいと感じる主な要因である残業が少ないことは、保育士にとって働きやすいとも考えられます。

夜勤手当をもらうと一般的な保育施設よりも給料が高くなる

院内保育では夜勤を担当すると、深夜時間帯(午後22時から翌5時)に勤務することになるため、2割5分以上の割増賃金が適用されます。

22時から5時までは2割5分以上の割増賃金が適用される。

さらに、時間外労働と深夜業務が重なる場合は、合計で5割以上の割増賃金が支払われます。

休日の深夜労働に関しては、割増賃金が6割以上です。

深夜業とは、午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることをいいます。深夜業に対する割増賃金は2割5分以上となります。

割増賃金は重複して発生することがあります。時間外労働が深夜業となった場合、合計5割以上(2割5分+2割5分)の割増賃金を支払う必要がありますし、休日労働が深夜業となった場合は6割以上(3割5分+2割5分)の割増賃金を支払う必要があります。

引用:厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」

このように、労働基準法に基づくと院内保育で夜勤を担当した場合、一般的な保育施設よりも高い給料をもらいやすいです。

例えば、月に数回の夜勤を担当した場合、基本給に数万円の手当が上乗せされることもあります。

ただし、院内保育所は認可外保育施設に分類されるため、処遇改善手当の対象外ということは留意する必要があります。

トラブルがあったときに保護者(医者や看護師)に連絡が取りやすい

院内保育は施設が病院の敷地内や隣接地にあるため、子どもにトラブルがあった際に、早急に保護者と連絡を取りやすいというメリットがあります。

例えば、子どもが急に体調を崩した場合や、ケガをした場合でも、保護者が近くにいるため迅速に対応が可能です。

一般的な保育園は、保護者が仕事中だと電話に出られないこともありますが、院内保育では病院内放送や専用の連絡手段を使って医師や看護師に伝言を届けられる場合があります。

院内保育で働くデメリット

院内保育には良い部分もありますが、すべての保育士に合うとは限りません。

  1. シフトによっては夜勤で生活が不規則になる
  2. 求人が少なく妥協した労働条件で働くことになる可能性がある
  3. クラスをまとめる力や遊びの提案力などが身につかないこともある

夜勤や小規模保育ならではの制約もあるので、デメリットを理解したうえで選択することが重要です。

シフトによっては夜勤で生活が不規則になる

院内保育は夜勤でシフトが組まれると、生活が不規則になることがあります。

夜勤は午後から深夜、場合によっては翌朝まで勤務することが一般的です。

生活が不規則になるため、睡眠不足や体調不良を感じる場合があります。

管理人も夜勤を経験したことがありますが、夜勤明けは疲労感が強く、寝たいときになかなか寝付けないこともあります。

夜勤のない院内保育の求人もありますが、夜間保育を実施している院内保育が50%を超えていることから見つけにくいのが現状です。

夜勤で働く際には自分のライフスタイルや健康を考慮し、休息を確保する習慣を持つことで、負担を軽減できるでしょう。

求人が少なく妥協した労働条件で働くことになる可能性がある

院内保育は求人が少なく、希望通りの条件で職場が見つからない可能性があります。

これは院内保育を実施している施設は、一般的な保育施設よりも少ないため、比較できる母数が少ないからです。

また、院内保育は人気が高いため、募集枠がすぐに埋まってしまうことが多いのも実情です。

以下のような、院内保育を取り扱っている保育士転職サイトに登録して、すぐに確認できるように求人情報が入ったタイミングで担当者から教えてもらうようにしておく必要があります。

スクロールできます
院内保育の求人数転職サポートの有無
保育士人材バンク80件あり
保育士ワーカー6,101件(企業内・学童なども含む)あり
保育士バンク766件あり
ヒトシア保育174件あり
マイナビ保育士480件あり
ほいくisお仕事探し1,772件なし
ほいくジョブ538件(病院内保育室)あり
保育のお仕事177件あり
ほいく畑100件(企業内保育を含む)あり
保育士コンシェル51件(病児・病後児保育所を含む)あり

※院内保育の求人数は2025年2月1日時点の公開求人数を参考にしています。

保育士転職サイトは院内保育の求人が多く、履歴書や職務経歴書などの提出書類の添削や面接対策を行なってくれる保育士ワーカーや保育士バンクを選ぶと、希望条件で働きやすいですよ。

クラスをまとめる力や遊びの提案力などが身につかないこともある

院内保育での働きはクラスをまとめる力や遊びの提案力など、保育士としてのスキルが身につかない可能性があります。

これは院内保育は子どもの人数が少なく、大規模保育施設に比べて「大人数をまとめる力」を養う機会が限られるからです。

また、院内保育所は施設が小規模で園庭がないこともあるため、身体を動かす遊びや大がかりな行事などができずに提案に制限があります。

本記事は役立ちましたか?
YesNo
目次